障害児Kとおたく母の疾走日記

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help リーダーに追加 RSS なぜ人は虐待するのか

<<   作成日時 : 2008/01/16 12:00   >>

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 本のご紹介。「障害のある人の尊厳を守るために」という副題がついています。

 「なぜ人は虐待するのか」  野沢和弘 著 
      (有)Sプランニング 知的障害と社会 シリーズT  1050円


 このところ少しずつ表面化している知的障害者施設での虐待事件をとりあげ、その根源となる権利侵害について考えている本です。
 一般書店やネットでも見つからず、野沢氏が参加されたイベント会場で購入しました。

 まず、記載されている虐待事例のあまりのひどさに驚きます。すべて実際に起こった事件ですが、こんなことをする人が福祉の現場にいるのか、我が子もこんな目に遭うかもしれないのかと考えると目の前が真っ暗になります。

 虐待はいけない。そんなことは当たり前だから、自分も絶対にしない。誰もがわかっている、そう思っているはずなのになぜ事件は起こるのか。なぜ隠されてしまうのか。親の立場と福祉の現場、両方の視点から野沢氏は問題を掘り下げています。

 たいていの親は、育てる過程でたくさん辛い思いをしています。そんな子を面倒見てくれる施設は本当にありがたい。子供が少々の体罰を加えられたとしても、仕方ない。そういう子なのだから。
 この施設を出されたら他には多分受け入れてもらえない。せっかく親なきあとの居場所を見つけたと思っていたのに。
 
 そんな気持ちが、虐待を疑ってもその確認や追求に二の足を踏ませてしまう。

 そして、施設職員。常識でははかれない行動をとる障害者達から一瞬も目を離せない、場合によっては自分自身に危害を加えられることも、という緊張の中で常に体力・精神力をフル回転させなければいけない。

 勢い余って力で利用者を抑えることもある。一度それをやったとしても、その後にセーブできるか。少しずつエスカレートして感覚が麻痺していく。

 本文より引用。

 いつも、ささいなことから始まるのです。
 抑制心がなくなったときから、いわゆる「連続性の錯覚」に陥るようになります。
 ささいなことが、ささいではなくなり、しだいに権利侵害の悪質さは増していき、虐待へと発展していき、それに対して心が痛まなくなるのです。
 ささいな行為からひどい虐待までが連続しているから、本人はいつまでもささいなことだと錯覚してしまう。それを、「連続性の錯覚」と呼びます。


                                    引用終わり。
  
 利用者たる障害者が自分の意思を伝えられない。また、現在の司法の場では知的障害者の証言に証拠能力を認めてもらえないこともある。
 野沢氏は、利用者を「文句を言わない客」と表現しています。
 
 苦情も不満も言えないお客(親もまたしかり)相手のサービス業。しかし、それを「不満がない」と履き違えて、「うちは立派な施設だ、間違いなど起こらない」と過信していないかというのです。

 さらに引用。

本気で施設長や職員が苦情を聞こうとしている施設は、いかに自分達の支援が不完全で未熟であるのかを自覚しているものです。自分の弱さや認められる施設長や職員がいる施設では、障害者も親も何かとものが言いやすい雰囲気が生まれます。

 (中略)

 もともと利用者(消費者)からの苦情や注文から遮断されている職場は、受け手発想が乏しくなるためリスクが高いと言われています。

                                    引用終わり。

 この本の中には、施設職員を対象とした野沢氏自作の意識分析チャートがついています。現在の状況を見直す手助けになるかもしれません。

 ただ、ひとつ思うこと。
 何度も書いてきましたが、障害児者への対応の困難な部分をわかっているからこそ、親は誠実に対応してくださる福祉職の方々には心から感謝したくなります
 でも、その苦労が決して報われているとはいえない現在、どうにもならない状況の中で、ふと何かを見失う瞬間があっても不思議ではないと推察します

 最初から虐待をしようと思っている人も、自分が、または我が子が虐待されても構わないと思っている人もいない。それなのに、こういうことが起こる。それが、悲しいのです。


 参考過去記事 「差別、されてますか?・・・『条例のある街』」

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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
本当に、こういう事件は憤りが止まりません!!
最近はチャレンジドの方々のみならず、認知症の高齢者の方の虐待も多いと聞きます。
福祉に携わる人間が、虐待だなんて…
許せません!!
たかびごん
URL
2008/01/16 21:30
本当に悲しいことですね・・・でも障害者の施設も高齢者の施設も、悲しいかな政策により補助金は激減、職員は薄給のなか人員も少なく、職場を去る人も多く、残った人は残業に夜勤にと追いつめられているとのこと。親である私すらときに理性を見失い手をあげてしまうことがありました。それを思うと、そのかたたちを一概には責められない。大変な職場を志してきて頂けるのは本当に有り難いことなんだもの。もっと現場にゆとりを!と切に思います。「踊る大捜査線」じゃあないけれど、「事件は現場で起きている!!!」んですよね。
ちえのすけ
2008/01/17 10:08
たかびごん様
 いちばん辛い思いをしているのはその高齢者や障害者本人達なのに、それを訴えることができない。本当に悲しいことです。こういうことも実際にあるのだということをもっと知ってほしいですね。
tomoko
2008/01/17 14:36
ちえのすけ様
 そうなんですよ、政治家や官僚の皆様にはもっと現場を知ってほしい、一日、いや半日でいいから施設で働いてみてほしい。そして、責任も条件も厳しい中で頑張っている人達が報いられる福祉を実現していただきたいです。気持ちに余裕がなければ、他者をいたわる心だって削られてしまうと思います。
tomoko
2008/01/17 14:40
息子を出産するまで学生時代からずっと福祉の分野を歩いてきました。
社会福祉系の道を志す人は「人の役に立ちたい」と多かれ少なかれみんな思っています。だけど、家族に感謝され利用者は物も言えず資格や職場の名前を言うと「えらいねー」と感心される。そんな瞬間が最高に気持ちよかったです。「ありがとう」の一言に支えられるってよく言うけど今思えば、「ありがたがられる自分に酔ってる」私だったと思います。同僚や同じ道を志した学生時代の友達にもそういう人は多いと思います。「人の役に立ってる」ことで自分のアイデンティティを保っているのです。そんな中、「この利用者は言えないだろう」という人に日頃のストレスをぶつけることが何の躊躇もなくなってくるんです。だって、誰も見てないし、わからないから。
きみよ
2008/01/17 19:14
福祉の現場は特別じゃなく働いてる人も素晴らしいワケじゃない。だから、遠慮なく苦情、意見を言った方がいい。障害児の親となり初めて分かったことがある。そう思って思ったことははっきり意見していた時期がありました。
だけど、結局利用者って弱いです。特に子どもが物を言えない、居場所がない、面倒見てくれる人がいない、そんな状況下で私も何度となく壁にぶつかり言葉を飲み込むことが多くなりました。飲み込んだ言葉の数と息子と二人になってからの疲労感が現実の厳しさを物語っているなあと身にしみます。
つづきです。
2008/01/17 19:15
虐待について、悲しんだり憤ったりするだけでなく、「なぜ人は虐待するのか」を掘り下げた本なのでしょう。私も探して見つからず、入手できずにいる一人です。
GAMI
2008/01/17 22:11
きみよ様
 福祉を、いわば内と外からご覧になったわけですね。私も、人里離れた養護学校に参観などに行き小さな教室に入ると時々思います。「この密室のような空間で、物言えぬ子と指導者が過ごしている」、その事実へのかすかな不安。
 その不安は、要望やクレームを申し入れようとした時にやはりひっかかるのです。それをどうしたらいいのか。今でもわからないのです。でも、自分が死ぬまでには絶対に払わねばならないモヤモヤなのですが。 
tomoko
2008/01/18 12:22
GAMI様
 私もイベント会場で偶然見つけました。一般書店では扱っていないのかもしれません。出版社に直接問い合わせてはいかがでしょうか。
tomoko
2008/01/18 12:25
こんにちは。
先日コメント入れようとしたのですが
上手くまとまらず・・・スミマセン!
自分の考えが上手く書けないんです。
一日でも早く悲惨な事件や虐待がなくなってくれればと願うばかりです!
心が痛くて悲しい現実ですね。

ちいこ
2008/01/18 18:05
虐待、大嫌い。
みゆきちゃん
URL
2008/01/19 09:47
ちいこ様
 表面化していない事例は多分たくさんあるのでしょう。お金を残してもこういう問題の完全解消には繋がらない。親は死ぬに死ねない、です。
tomoko
2008/01/19 14:17
みゆきちゃん様
 抵抗できない相手にストレスをぶつける、というのはやはりいただけませんよね。誰もが心穏やかに生活したいです。
tomoko
2008/01/19 14:19
今まさにそのことで悩んでいます。
私の勤める施設で、虐待まではいきませんが職員が利用者に対してめっちゃ上目線です。それがおかしいということが分からない。施設長からそうなので、皆迎合します。私は職場の中で浮いています。つらいけど逃げるわけにいかないです。
てるぼー
2008/01/20 07:31
てるぼー様
 今、まさに辛い立場にいらっしゃるのですね。でも、「おかしい」と感じている方がいる、ということをとても心強く、嬉しく思います。内部を変えるのも外に訴えるのもとても難しいことです。でも、現状を落ち着いて捉え、「おかしい」と感じることができる職員さんがひとりでもふえてくれることを祈りたい。てるぼーさんのような立場の方はまだたくさんいらっしゃると思います。親としても、自分達の力が及ぶ限りそのような方たちの力になりたいのです。 いつか、ではなく今すぐなんとかしなければいけないことなのに、本当に歯がゆいです。
tomoko
2008/01/20 13:39

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